支弁区分
本ページの内容は、執筆時点(令和6年6月21日)までに通達された文部科学省の「支弁区分の新しい算定ルール」の資料と、情報提供いただいた「都道府県の個別の質問に対する文部科学省の回答」に基づいています。
執筆時点において新しい算定ルールの解釈について若干の曖昧さが残っています。
それゆえ今後、文部科学省より発出されるであろう通知等に照らし合わせたときに、本ページの内容が誤ったものになってしまう可能性があります。
本ページの内容に誤りなどがございましたら、サポートフォーラムまたは support@p-space.jp までお寄せください。
「支弁区分」は就学奨励費の支給額計算の基となる「児童生徒の保護者等」の区分です。
保護者等の世帯の住所地や、世帯の世帯構成員(生計を一にし世帯を構成する者)の年齢や所得などによって計算され、児童生徒の就学に関する経済的負担能力の余裕の少ない順に「支弁区分1」「支弁区分2」「支弁区分3」のいずれかに分類されます。
支弁区分の呼称と表記
「支弁区分」は過去に「支弁段階」と呼ばれていたこともあり、支弁区分については「1段階」「2段階」「3段階」と呼ぶケースがあります。
支弁区分の正式な表記はローマ数字を用いて「Ⅰ」「Ⅱ」「Ⅲ」と表記します。
これらのローマ数字は 環境依存文字なので、就学奨励費ソフトウェアでは主にアラビア数字を用いて表示します。
支弁区分の算出
保護者等の支弁区分は、「昨年度の世帯の収入額(D)」と「昨年度の世帯の需要額(m)」の割合に基づいて決まります。
収入額 ÷ 需要額 (D/m) | 支弁区分 |
---|---|
1.5 未満 | 支弁区分1 |
1.5 以上 2.5 未満 | 支弁区分2 |
2.5 以上 | 支弁区分3 |
「収入額 ÷ 需要額 (D/m)」は小数点以下第三位を切り捨てて、小数点以下第二位まで求めます。
昨年度の世帯の収入額
「世帯の収入額(D)」は「世帯構成員の収入額の合計(A)」と「保険料控除額の合計(B)」によって決まります。
「世帯構成員の収入額合計(A)」は世帯構成員の昨年度の「総所得金額」、「退職所得金額」、「山林所得金額」(いずれも所得控除前の額)の世帯内の合計です。
「世帯構成員の保険料控除額の合計(B)」は世帯構成員の昨年度の「社会保険料控除」、「生命保険料控除」、「地震保険料控除」、「小規模企業共済等掛金」「雑損控除」の世帯内の合計です。
「ひとり親または寡婦控除の額」については、児童生徒の保護者等として届けられる世帯構成員が「ひとり親控除」あるいは「寡婦控除」を受ける場合に、それぞれ「30万円」「26万円」が計上されます。
「世帯構成員の収入額合計(A)」の算出に必要な「世帯構成員一人ひとりの額」は、世帯構成員の所得証明書によって(あるいはマイナンバー経由の税情報照会によって)入手できます。
昨年度の世帯の需要額
世帯構成員ごとに測定して合算
前年末日時点での世帯構成員情報それぞれについて額を測定し、それらを合算して(a)~(g)を求めます。
文部科学省が参考様式として例示する「収入額・需要額調書」の記号と異なりますのでご注意ください。
- 基準額 ( a )
世帯構成員の教育扶助基準額(月額)の合計額
教育扶助基準額(月額)は、「保護基準額等早見表」から調べます。 - 教材代 ( b )
世帯構成員のうち、前年末日時点で義務教育期間中にある世帯構成員について、学校長又は教育委員会が正規の教材として指定するものの購入又は利用に必要な額の月額を求め、合算します。 - 学校給食費 ( c )
世帯構成員の教育扶助基準学校給食費(月額)
教育扶助基準学校給食費(月額)は「保護基準額等早見表」から調べます。 - 通学費 ( d )
前年末日時点で義務教育期間にあり、かつ特別支援教育を受けていた世帯構成員について、その本人が通学に用いた経費の月額(年額の12分の1、円未満は四捨五入)を求め、合算します。
- 第一類 ( e )
世帯構成員一人ひとりについて生活扶助第一類の額を求め、合算します。
生活扶助第一類の額、第一類の額の逓減率は「保護基準額等早見表」から調べます。
- 期末一時扶助 ( f )
世帯構成員の期末一時扶助の額(12分の1して月額換算)
世帯構成員1人当たりの期末一時扶助の額(月額)は「保護基準額等早見表」から調べます。
- 障害者加算額 ( g )
前年末日時点で特別支援教育を受けていた世帯構成員についてそれぞれの障害者加算額を「保護基準額等早見表」から調べます。
調べて得た障害者加算額が「注目する世帯構成員」に計上されるかどうかは、後述の『障害者加算 / 母子加算の計上ルール』によって決まります。
世帯ごとに測定
以下の額は世帯単位で測定します。
-
第2類基準額 ( h )
世帯の人数によって定められている基準額 -
地区別等冬季加算額 ( i )
世帯の 地区区分と人数から一意に定められている額の月額です。
「保護基準額等早見表」から調べます。
-
生活扶助基準 計 ( j )
生活扶助に関する額の中間集計です。
生活扶助基準計 ( j ) =
生活扶助基準第1類の額(e)×逓減率(10円未満は10円に切り上げ) + 期末一時扶助 ( f ) + 障害者加算額 ( g ) + 第2類基準額 ( h ) + 地区別等冬季加算額 ( i )
逓減率は「保護基準額等早見表」から調べます。
-
住宅扶助基準 ( k )
世帯の 級地区分によって定められている額
住宅扶助基準額(月額)は「保護基準額等早見表」から調べます。
-
母子加算 ( l )
母子(父子)世帯について、級地区分と「前年末日時点で18歳未満である世帯構成員(=子)」の人数を基に計算されます。
ただし「前年末日時点で特別支援教育を受けていた世帯構成員」の人数によっては計上されないケースがあります。
計上されるかどうかは後述の『障害者加算 / 母子加算の計上ルール』によって決まります。
以上で求めた(a)~(l)の額を合算して、世帯の需要額(m)を求めます。
障害者加算 / 母子加算の計上ルール
令和6年5月下旬に支弁区分の「新」算定基準が公開されましたが、障害者加算 / 母子加算の計上ルールは公開後にも変更があり、本ページ執筆直前までその解釈がはっきりとしませんでした。
取引のある複数の教育委員会事務局様のご協力いただきまして以下の説明のように整理しましたが、解釈の違いや今後のルール変更があれば今後の正しさについては保証できません。
お気づきの点がございましたら、サポートフォーラムまたは support@p-space.jp までお寄せください。
生活保護においては「障害者加算」は世帯単位に計上されますが、就学奨励費において「障害者加算」は世帯構成員ごとに、「母子加算」は(生活保護と同様に)世帯ごとにそれぞれ計上されます。
「障害者加算」の額は世帯の級地区分によって、一人当たりの単価が決まります。(「保護基準額等早見表」から調ベます。)
「母子加算」の額は世帯の級地区分と、「前年末日時点で18歳未満である世帯構成員の人数」によって「保護基準額等早見表」を基に計算します。
世帯構成員あるいは世帯に対して算出される障害者加算、母子加算の額が『実際に計上されるかどうか?』は以下の条件によって決まります。
- 母子(父子)世帯かどうか?
- 『前年末日時点に特別支援教育を受けていた世帯構成員』が注目する世帯に何名いるか?
母子(父子)世帯「ではない」世帯の障害者加算/母子加算
母子(父子)世帯「ではない」世帯に対して、「母子加算」は計上されません(つねに0です)。
『前年末日時点に特別支援教育を受けていた世帯構成員』に対しては「障害者加算」の額が一人ずつ、計上されます。
母子(父子)世帯「である」世帯の障害者加算/母子加算
母子(父子)世帯「である」場合は、
『前年末日時点に特別支援教育を受けていた世帯構成員』の人数が『1名以下』であるか、それとも『2名以上』であるか?
によって、障害者加算、母子加算の計上の可否の判断が変わります。
『前年末日時点に特別支援教育を受けていた世帯構成員』の人数が『1名以下』の場合
はじめに注目する世帯の『「障害者加算」の合計額』と『母子加算』を比較します。
『「障害者加算額」の合計額』が『母子加算額』よりも大きい場合、
「母子加算」は計上されません(つねに0です)。
「障害者加算」は『前年末日時点に特別支援教育を受けていた世帯構成員』一人ずつに計上されます。
『「障害者加算額」の合計額』が『母子加算額』よりも小さい場合、
「母子加算」は計上されます。
ただし『前年末日時点に特別支援教育を受けていた世帯構成員』に「障害者加算」は計上されません。
『前年末日時点に特別支援教育を受けていた世帯構成員』の人数が『2名以上』の場合
「母子加算」は計上されます。
「障害者加算」も『前年末日時点に特別支援教育を受けていた世帯構成員』一人ずつに計上されます。
障害者加算 / 母子加算の計上例
支弁区分決定の例外
一部辞退
世帯の収入額が令第2条第3号(収入額が需要額の2.5 倍以上の場合)に該当すると保護者等が自ら認め、負担金等の全部又は一部の給付を辞退する場合、収入額・需要額調書に代わる書類によってその世帯を支弁区分3とすることができます。
※就学奨励費ソフトウェアではこのケースに該当する世帯を「一部辞退」と呼んでいます。
措置費・療育費 受給
「児童福祉法」(昭和22 年法律第164号)に定める児童福祉施設、指定療育機関等に入所又は入院し、当該施設等において就学に係る措置費又は療育の給付を受けている場合、収入額・需要額調書に代わる書類によってその児童生徒の支弁区分を支弁区分3とすることができます。
※就学奨励費ソフトウェアではこのケースに該当する児童生徒を「措置費受給(生)」と呼んでいます。
措置費又は療育の給付を受けていない施設生の保護者等には、収入額・需要額調書に加えて、措置費を受けていない旨の施設の長等の証明書の提出、あるいは指定療育機関で療育の給付を受けていない旨の機関の長等の証明書の提出が求められます。
生活保護
「生活保護法第6条第2項に規定する要保護者である児童生徒の保護者」等について、収入額・需要額調書に加えてそれぞれを証明する書類(市町村や福祉事務所、民生委員等による)を提出させることによって、その世帯の支弁区分を支弁区分1とすることができます。
学校長は市町村や福祉事務所、民生員など協力機関と十分に連絡を取ることが求められます。
この法律において「要保護者」とは、現に保護を受けているといないとにかかわらず、保護を必要とする状態にある者をいう。
年度途中の支弁区分変更
事務処理資料には、
保護者等の収入額に著しい減少が生じた場合や昨年12 月末現在の世帯員に変更が生じた場合など、障害のある児童等の就学奨励のため、改めて支弁区分の決定を行うことが適当であると認められる事由がある場合においては、改めて収入額等の算定及び需要額の測定を行うことができる。
という記述があります。
参照
- ケーススタディ 支弁区分が正しくない
- 業務フロー 8. 適宜行う処理 区分決定後の区分変更